てんとう虫

帰りの電車の中での話。
満員電車、になるぎりぎりくらいで、つり革は全部つかまれてるくらいの混み具合。
目の前の人が降りて、あいた席に座ってほっと一息つく。
と、目の前のグレーの床になにやら小さい黒い粒が。
何かと思ってよく見てみると、そいつは突然にゅっと羽を出した。
そう、てんとう虫がこんなところに。
虫が電車に入り込むことはそんなに珍しいことじゃないんだけど、あんまりこんなところで見る虫じゃないからちょっとびっくり。
黒いボディに、よく見ると赤い斑点がありました。


そんな彼(彼女?)は、人でごった返した中の隙間、床の開いた部分を、その小さな足でうろうろうろうろしてるわけですよ。
ちょちょちょ、そっちいくとあぶねえぞ……ちょっとゆれて足踏みされたら終わっちゃうよ?
そうそうOKOKそっちいけそっちいけ……ああそっちもだめだってば!
うまくよけてくなあ……お前はいったい何がしたいんだ?
ああこっちくんなこっちくんな俺に上ろうとかするんじゃないぞ?
がんばれーいきのこれー。
床を見てるふりして、しばらく目で追ってたら、そのまま人影に隠れてみえなくなっちゃった。


で、あいつどうなったかなーとおもいながら、駅に止まって人が降りていった後でまた発見。
降りようとした客にくっついていたらしく、いきなりワープしてました。


そんなこんなで、俺が降りるまであと3駅ほど、かれこれ15分くらいうろうろと足の隙間を歩き続けるてんとう虫。
さすがにここまでくると、俺が降りるまで位は無事にいてほしいと思うようになってきた。
たっている人も見つけた当初の半分くらいになったし、そうそう踏まれることはないんじゃいかと思ってついに俺が降りる隣の駅まで。
よしきた、もうちょいだ……っておまえさんちょっとドアに近すぎじゃない?
まあまさかこっち方面で乗ってくる人ももういないだろう……っていたーーーー!
ちょちょちょ待て待て足近い逃げて逃げて!
そうそうそっちいけー足その向きなら踏まれないから……おばちゃんそのまま移動してー……
……ターンは! ターンはやめて! そこでたちどまら、ああああああーーーーー!!!!!!


こうして、長いてんとう虫電車の旅は終わりを告げました。俺が降りるひとつ手前で(´;ω;`)
目の前で小さな命が天に召される瞬間をみちゃった……合掌。
おばちゃんは俺と同じ駅で降りていきました。床がちいさく湿ってた……


ムシキングなんかより、よっぽどスリリングなものを見てしまった。
でもちょっとかわいそうに……(´・ω・`)